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監修:帝京大学薬学部薬品化学教室 教授 山崎正利先生

RAの医学 —サイトカイン最前線—

第1回 サイトカイン学こと始め

サイトカインとは

一般に細胞の増殖、分化、死や細胞機能の発現、停止は周りの細胞により厳密に制御され、その結果、正常な発生や生体の恒常性が維持されている。こうした細胞同士のコミュニケーションは、細胞表面分子を介する直接的な細胞同士の接触や可溶性分子を介して行われている。この細胞間情報伝達分子が「サイトカイン」である。サイトカインは種々の細胞から分泌され、細胞の情報伝達に関わるタンパク質であるが、抗体のような特異性を持たない(図①)。
ホルモンも細胞間情報伝達分子の代表例であるが、一般的にホルモンは特定の産生臓器があり、血流を介して遠くの標的細胞に働き、遺伝子発現や細胞機能の調節を行っている。エンドクリンと呼ばれるゆえんであり、物性的には比較的低分子のペプチド性のものが多い。
一方、サイトカインは分子量がおおむね1万~数万程度のタンパク質であり、ホルモンのように産生臓器は明確ではなく、比較的局所的に作用する場合が多い(パラクリン的作用)。しかし、厳密にホルモンとサイトカインを定義上区別することは困難であり、どのようなものまでサイトカインに含むかについては、現在のところコンセンサスはない。サイトカインは、生体内で免疫/生体防御、炎症/アレルギー、発生・分化(形態形成)、造血機構、内分泌系、神経系に直接的あるいは間接的に関与し、またその破綻としての各種疾病にも大きく関係している。

サイトカインの歴史

サイトカインの歴史は、わずかに30年前に遡るに過ぎない。最初は、試験管内でリンパ球を刺激したとき、その培養上清中にリンパ球の増殖を誘導する未知の非特異的な可溶性因子として想定された。物質の同定ができない当時にあっては、その機能から様々な呼称でサイトカインが命名されていた。リンパ球から産生される情報伝達分子の総称を「リンホカイン」といい、単球/マクロファージから産生される情報伝達分子を「モノカイン」と総称した時代があった。現在では両者の区分はあまり意味のないことから、ほとんど使われていない。
また、こうした情報伝達分子は白血球により産生され、白血球間の情報交換に関与することから、「インターロイキン(IL)」という統一名称がつけられるようにもなった。サイトカインはその生理活性が記述され、それに対応する遺伝子がクローニングされることにより、初めて物質的に認知されるようになったのである。したがってインターロイキンの番号は、おおむね遺伝子がクローニングされた順番と符合する。
サイトカインの研究は、免疫系の制御因子として1980年代に急速に発展し、この20年間に膨大な数の論文が発表されるようになった。サイトカインは免疫系のみならず、生命現象のあらゆる場面に関与することから、現在ではサイトカインなしに生理、病態の理解は不可能であり、サイトカイン学という独立した分野が成り立つほどである。

サイトカインの種類

サイトカインは、構造的あるいは作用機序の上から種々分類することができる(表1)。たとえば、多くのインターロイキンやコロニー刺激因子はクラスIのサイトカインとして知られ、クラスIIサイトカインとしてはインターフェロンファミリーがある。クラスIとIIは構造的にも類似性がある。TNFファミリーとして知られる細胞傷害因子群は、そのレセプター群にシステイン残基の特徴的な配列がある。
TGF-βファミリーも多数同定されているが、多くは骨や組織などの形態形成に重要なはたらきを示すものが多い。また、そのレセプター自身がセリン/スレオニンキナーゼ活性を持つ。
EGFなどの増殖因子サイトカインのレセプターは、チロシンキナーゼである。ケモカインは白血球の走化性因子としての活性を示す一群のサイトカインであり、多くのインターロイキンより比較的低分子で数千~1万程度の分子量である。ケモカインレセプターは、細胞膜を7回貫通するGタンパク質に共役したレセプターとしても知られている。
サイトカインは当初、可溶性分子と考えられていたが、膜結合性と可溶性の両方のサイトカインが見出されている。これは可溶性サイトカインが、膜結合型分子から進化した可能性を示唆するものである。

サイトカインの機能

サイトカイン全体に共通する性状としては、一般的に以下のことが考えられる。
1)ホルモンと同様に、きわめて微量で効果を発揮する。
2)ホルモンと同様に、標的細胞特異性を示し、産生はフィードバック調節を受ける。
3)1種類のサイトカインは、複数の多様な機能を示す(機能の多様性)。
4)複数のサイトカインが同じ機能を示す(機能の重複性)。
5)サイトカイン間での相互依存性(サイトカインネットワーク機構)が存在する。
4)は、複数のサイトカインが標的細胞内に共通のシグナル伝達系をもっているため、同じ反応を引き起こすのである。たとえば、IL‐6、IL‐11とLIF(白血病抑制因子)は、細胞表面上のそれぞれに特異的なレセプターに結合するが、結合後のレセプターを介する細胞内シグナル伝達は、いずれのサイトカインの場合にも同じ糖蛋白(gp130)を介して行われるために、これらのサイトカインは多くの共通した生物活性を示すのである。
5)は、あるサイトカインが産生されると、そのサイトカインが第2のサイトカインを誘導し、さらにそれに依存して第3のサイトカインが誘導されてくるというカスケード現象が引き起こされる。また多くのサイトカインは、他のサイトカインの産生を誘導、促進するが、一部のサイトカインは他のサイトカインの産生を抑制する。
このように、1つのサイトカインが複数の作用を示す一方、複数のサイトカインが同一の作用を示し、かつサイトカインの産生には、種々のサイトカイン間での相互依存性がみられるのである。サイトカインの話は難しいとよくいわれるが、それはおそらくサイトカインの種類が多いことと、その多様かつ複雑な機能によるものと思われる。

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